制御設計エンジニアの転職

『制御設計エンジニアとしての経験を活かして転職を考えている。』
『制御設計エンジニアへの転職を考えているが、必要なスキルを知りたい。』

このような要望が転職技術部に寄せられています。制御系エンジニアの実際を紹介していきます。

電源装置や機械装置の制御設計を行ったこともあり、また電子回路設計を中心に自動車業界等での経験もある転職技術部のエンジニアが自身の経験をもとに要望にお応えします。

ところで、『制御設計』とは何でしょうか。

制御設計とは?

広い意味で言えば、家庭用電化製品、産業用機械やロボットなどの制御(シーケンスや手順、コントロール)を設計(仕様の策定)するのが、『制御設計』です。

近い言葉として『電気設計』があります。業界やアプリケーションによっては電気設計に制御設計を含む場合や並列して(同じような意味で)取り扱っている場合も多く見かけます。

家庭用電化製品や自動車など専用のコントローラ(マイコン,ECU)を持った機器は、組み込みエンジニアがプログラミングを行いますし、システム設計者(開発者)が制御設計を行うため、制御設計という職が存在しない業界もあります。

制御設計という職はほとんどの場合、産業用機器やロボット、工場のやプラント等の業界で使われている名称で、汎用のFA機器(代表格はPLC:プログラマブルコントローラ)の動作仕様を決定し、プログラミング、検証を行っていくのがメインの仕事になります。

制御設計の業務の流れ

制御設計の業務の流れは、以下のようになります。
(この先は、PLCの使用が前提の業務フロー紹介になっています。)

1. 要件定義
要件定義に従い、仕様検討を行います。仕様が決まると、詳細仕様をプログラムしていきます。(使用するハードにより、ツールや言語は異なります。)

2. 仕様検討
仕様書では、動作条件を設定しながら、フロー図等も作成していきます。

3. プログラミング
ラダー図(ラダープログラム)を使用した設計を行うことが多く、専用のプログラミングも記述できます。

プログラムと同時に、HMIの作画を行うことも多いです。(産業用機器やロボットなどはLCDなどのHMIを持っており、作画と同時にLCDとの入出力も確認が必要です。)
プログラムが終わると単体で動作確認を行います。

4. 動作確認
統合開発環境(PLCの開発用ソフト)で単体でのシミュレーションができるようになっています。
単体動作確認が終わると、実際の外部機器を接続して、統合的な動作確認を行っていきます。

5. テスト・デバッグ
様々なセンサ入力や、通信、アクチュエータのコントロールや温度調節など様々な機能を担っており、テスト・デバッグの条件設定とテストは大変ですが、制御設計のやりがいを感じる部分でもあります。

制御の仕様で規定している入出力と、実際のセンサーの入出力は物理的な性質が異なります。
実際に制御を行ってみるまで分からないこともあります。

温度の計測を例にしても、ノイズや測定誤差、バラツキ、センサ位置と測温等々…
産業用機器やロボットは少量生産ものも多く、機種ごとに実際のハードウェアとの合わせこみも重要なポイントになってきます。

制御設計エンジニアのスキル

それでは、制御設計エンジニアにはどのようなスキルが求められているのでしょうか。
筆者の経験をもとにしたスキルを紹介します。概ねこのようなスキルが求めれれます。

理系バックグラウンド(モデリング力)
電気系・機械系等の理系バックグラウンドがあると良いです。
制御対象のプラントを正確に理解(モデリングして)制御する必要があります。


電気設計・ハード設計
制御対象は電気システムです。電気回路図からハードウェアを理解する能力が必要です。
電子回路設計の知識(応答性やノイズ対策)が役に立ちます。
活線(AC 100-220V)に対する安全知識も必須です。(電検三種や電気工事士あれば尚可)

プログラミングスキル
PLCのラダー作成はソフトウェアプログラミングです。
画像処理や通信の実装のため、組み込みPCを使ってC,C++でシステムを作ることもあります。

ST/SFC言語の知識も必要です。

CAD経験
2DCAD等(3DCAD尚可)での図面作成の経験(AutoCADが使われている現場が多いようです。)

産業機器、設備に関する知識
制御対象の産業機器や設備に対する知識が必要になります。
自動装置や工作機械、搬送機等々..

制御設計エンジニアの給与

制御設計エンジニアの給与ですが、一般的な製造業のエンジニアと相違ないようです。
上場企業や外資系の企業ですと非管理職でも年収600-700万円くらいは可能です。
ボリュームゾーンは450-550万円くらいというのが相場ではないでしょうか。
30代のエンジニアで、350-500万円くらいの給与で働かれている方は給与が低すぎるかなと考えてもよいと思います。

制御設計エンジニアの将来性について

制御設計の仕事は今後、AIやIoT, インダストリ2.0に代表される工場自動化等の新しい動きや技術が多く出てきており、総合的なエンジニアリング能力を持ったエンジニアの需要が高まってきています。製造業業のノウハウにかかわる重要なポジションとしての発展を期待できます。

制御設計エンジニアの転職

現在、制御設計に従事されている方が今後の転職先として検討すべき職種を挙げてみました。
どの職種も、今後も市場価値の高いエンジニアとして活躍が期待できます。

組み込みエンジニア
制御設計はマイコンプログラミングやOS開発はしないものの、組み込みエンジニアと近い業界です。開発対象がPLCから専用回路(マイコン・CPU・ASIC)に変わりますが、考え方は共通したものがあります。

FA機器の開発エンジニア
PLCをはじめとするFA機器を使いこなしてきたエンジニアの方々は、現場のノウハウを製品の開発に活かすことができます。また、アプリケーションエンジニアとしてFA機器メーカの立場から、開発支援を行っていくこともできます。

AIエンジニア
FA機器やPLCは工場やプラントの情報収集のフロントエンド機器です。
今後、AIを利用した取り組みが多くなってきています。

モデルベース開発エンジニア
オムロンのPLCには、Simulink PLC Coderからストラクチャードテキストをインポートすることができる機能があります。
MATLAB/Simulinkの実装(設計手法)は、自動車業界を中心に使われているMBD(モデルベース開発)の手法そのものです。

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