『HILS』って何?
『HILSエンジニアとは?』
このような疑問をお持ちの方は、転職技術部の過去の記事で紹介していますので、併せて読まれると幸いです。
さて、今回は『HILS』や『xILS』については大体分かっている。
『MATLAB/Simulink』についても分かっている。
『OEM(自動車業界で言うカーメーカー)、Tier1(OEMの一次サプライヤ)を経験していて、HILSエンジニアを目指している。』
そんな方に向けた記事にしています。断りや説明なしに専門用語が出て参りますが、ご容赦ください。
先の記事にも解説していますが、ここでは、HILSを誤解を恐れずに簡単に説明すると…。
『ハードウェアをシミュレーション環境でテスト(検証)する』ことです。
MBDのプロセスではxILSというのがいくつかあります。他にもPILSやCILS等いろいろありますが、着眼点によって多少分類が違います。ここでは、HILSを説明するためにxILSについて簡単に纏めます。
MILS(Model In the Loop Simulation)
すべて(プラントモデル、コントローラモデル)をPC(シミュレーション)で検証する。
SILS(Software In the Loop Simulation)
例えば、シミュレーションしているコンポーネント(代表例はエンジンECU)のソフト(マイコン内で動作しているC-Code)をPC上で検証する。
HILS(Hardware In the Loop Simulation)
SILSを経たECUソフトが書き込まれたHW(ハードウェア:実際の製品でも、ラピッドプロトタイプ用のターゲットでも可)をプラントモデルをリアルタイム実行するハードウェア(HILシミュレータ)に接続して検証。
HILSエンジニアのバックグラウンド
HILSエンジニアのバックグラウンドを知ることで、皆さんがHILSエンジニアを目指す際に必要な知識や経験が見えて来ますので、ここでは、私の経験からどのようなバックグラウンドを持ったエンジニアがHILSエンジニアとして活躍しているのか、またできそうか列挙してみたいと思います。
次に示すのは、HILS、自動運転、統合制御等の最も技術開発が盛んな市場価値の高いエンジニアに必要なバックグラウンドです。特にHILSの構築に関係のあるものは太字にしていますので、ご参考になさってください。サプライヤー等で特定用途のHILSを深く開発することになると、HILS構築の知識だけでなく、開発するターゲットそのものを深く知る必要が出てくるため、関係技術を可能な限り沢山あげておきました。
1. ECU・電装品(センサ・アクチュエータ等々)の開発・設計(ソフト・ハード)、テスト、評価
2. MBDの知見・各種ツール(MATLAB/Simulink, dSPACE, ETAS, Vector)
3. 自動車工学(車両運動、ステアリング、ブレーキ、サスペンション、アクセル等の運動統合制御、プラント(エンジン・トランスミッション等)設計・開発経験)
4. デジタル・アナログ回路設計・解析
5. ソフトウェア開発経験、システム設計
6. 動的計画法数値最適化、数値解析経験、確率、統計処理(化学、医薬品やポスドク可)
7. 心理学(認知・行動)、人間工学、脳科学、ドライバーの状態推定、異常判定
8. 制御工学、ロボット工学、
9. アルゴリズム、機械学習、Deep Learning、AI(人工知能)、制御モデル
10. 要求分析、アーキテクチャ設計などのシステムズエンジニアリング(モデル管理・構成管理)
11. 通信、RTOS、コネクテッド技術等を活用した各種統合制御
12. 自動運転、ADAS領域における車両統合制御
13. EV(HEV,燃料電池車,FEV等々)におけるパワートレイン統合制御
14. 電動パワートレイン関連の技術(モータ,バッテリー,インバータ,電力変換)
15. 画像認識・画像処理、FPGA
16. 赤外線、ミリ波レーダー
17. HMI/UI/XIデザインに関する知識
18. 地図生成技術、経路生成、車両制御
19. 品質工学、FMEA・FTA、DRBFM
20. 機能安全・ISO26262
HILSの説明でもあったように、シミュレーションのターゲットHWとシミュレータを電気的に接続して実時間でシミュレーションするのがHILSの特徴です。そのため、IF(インターフェース)のための電気回路・電子回路(アナログ・デジタル)の基本とMBD(モデリングツール)の知識、通信についてはHILS構築には必須知識となります。また、構築済みのHILSの運用であっても、基礎は押さえておくべきです。
加えて、対象ECUの知識が必要になってきます。場合によっては複数3-4項目が必要になってくるかと思います。
HILSエンジニアの募集企業
2020年2月に調査したところ、以下のような企業でHILSあるいは先進運転系の募集をしていました。最先端の技術を扱っている魅力のある会社です。(詳細は、転職エージェントまたは転職サイトで要確認)
どの企業も転職先として魅力のある会社ばかりですね。
HILSエンジニアの学歴と英語力
HILSエンジニアの求人の要項を確認すると、多いのがこの2パターン『学歴不問』or『大学院、大学、高等専門学校卒以上』です。私の知る限り、外資系のHILSエンジニアは大抵が大学院修士か博士が多い印象です。また、英語力ですが、TOEIC500-600は最低限必要です。特に英会話が必要ない会社であっても、HILSにかかわらずツール類はアメリカ・ドイツ製でマニュアルは英語です。(一部日本語もあります)
HILSエンジニアのツール知識、プログラミング
HILSエンジニアに必須のツールと言えばMATLAB/Simulinkですが、その他のツールはどのようなものがあり、HILSエンジニアはどの程度使いこなせているのでしょうか。また、HILSエンジニアに必要なプログラミング言語やそのレベル等についても纏めます。
MATLAB/Simulink,(Stateflow,S-function)
MATLAB/Simulinkのレベルですが、最低限トレーニングレベルを完全に理解し、Stateflow,S-functionについても使える必要があります。
C,C++,C#
S-function等でカスタムコードを多用するため、C,C++の中級程度の知識は必要です。実際にコーディングする機会があります。C#は特に必要ないでしょう。
Python
ツールの中にはPythonAPIを持っているものもあり、場合によってPythonが必要です。2,3系両方。基礎程度は必要でしょう。
VBA,PowerShell,script言語,Visual Studio
VBAについてですが、日本の自動車はExcelで出来ているという揶揄がありますが、本当の話で、仕様書から実験データやら何から何までExcelで管理しているのが日本の自動車産業の慣習のようなもので、OEMのエンジニアの多くがExcelを使っており、このデータを元にシミュレーションを行うこともあるので、VBAでの開発や、Shell,scriptあるいはVisual Studioを使った開発が必要になることもあります。これは、シミュレーションの自動化あるいは統合環境の構築に関係するところです。HILSエンジニアとしては何らかの経験をしていることが望ましいです。
HILS(dSPACE,ETAS,Vector)
また、HILSツール(dSPACE,ETAS,Vector)については、各社ツールがあるのですが、ここでは割愛します。基本的な考え方は同じで、慣れの問題なので、何か一社使えることが望ましいです。複数社使えるエンジニアもいますが、それほど優位性はないです。
各種、シミュレーションソフトですが、これはモデルや環境構築の際に最適なものを選択していればよく、必須ではありません。
sysML,Vivado
sysMLやVivadoについても必要に応じてですね。高速モータモデリングやハードをカスタムする需要のある場合にはVivadoが必要になります。
sysMLに関しては、大規模なシステム(MBD)に必要になってきますが、経験のあるエンジニアはHILSエンジニアのごく少数です。
いかがでしたか。皆さんがHILSエンジニアを目指すための参考になれば幸いです。
皆さんのHILSエンジニアとしての活躍を祈念しまして。
転職エージェント
この業界への転職ならばパソナキャリアがお薦めです。リンクから簡単に登録ができますし、親切で丁寧なサポートを受けられるので安心です。
最先端の技術に触れたい、イノベーション領域で活躍したいエンジニアの方は、ぜひ『Kaguya』に登録することをおススメします。
コメント